albatros blog

広田修の書評とエッセイ

ルイーズ・グリュック『野生のアイリス』

野生のアイリス 作者:ルイーズ・グリュック KADOKAWA Amazon 2020年のノーベル文学賞を受賞した詩人の一番著名な詩集。特に目立った技巧があるわけでもないし、特に斬新な認識があるわけでもないが、作品世界の構築の仕方にすごさを感じる。庭とそこにお…

『続続・荒川洋治詩集』

続続・荒川洋治詩集 (現代詩文庫242巻) 作者:荒川 洋治 発売日: 2019/06/10 メディア: 単行本(ソフトカバー) これは真に注目に値する詩集だと思う。言葉ひとつひとつに思索の漂う香りがまとっている。一行一行にこれといって難解な展開はないが、その一行…

谷川俊太郎『詩の本』

詩の本 作者:谷川 俊太郎 発売日: 2009/09/04 メディア: 単行本(ソフトカバー) 谷川俊太郎を読んでいたのは20歳くらいの頃だろうか。当時私は詩と哲学が読めるようになればすべての本が読めるようになると思って、詩については角川文庫の谷川俊太郎詩集…

三角みづ紀『隣人のいない部屋』

隣人のいない部屋 作者:三角 みづ紀 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2013/10 メディア: 単行本 本詩集に充満しているのは人間の執着心のようなものだと思う。三角は間柄に依存し、病に依存している。この依存心や執着心が人間の業を表しているようで、とて…

アーサー・ビナード『左右の安全』

左右の安全 作者:アーサー・ビナード 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2007/10/05 メディア: 単行本 この詩集は、生活の中でふと感じられる感慨深いものをエッセイ風に書き留めたものを集めている。著者はアメリカ人であるが、この詩集に現れているのは日本…

斉藤倫『さよなら、柩』

さよなら、柩 作者:斉藤 倫 出版社/メーカー: 思潮社 密林社 発売日: 2014/07/30 メディア: 単行本 斉藤の本詩集はウィットやユーモアに満ちているのだが、それよりも大事なのはこの詩集が愛に満ちているということだろう。斉藤は決して愛に飢えている孤独な…

川口晴美『やわらかい檻』

やわらかい檻 作者:川口 晴美 出版社/メーカー: 書肆山田 発売日: 2006/06 メディア: 単行本 本詩集のタイトルである「やわらかい檻」というのは、まず第一には少女の身体そのものを指すだろう。少女を閉じ込め、それでありながら周囲の世界と溶け合っている…

小海永二『夢の岸辺』

詩集 夢の岸辺 作者:小海 永二 出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売 発売日: 2000/06 メディア: 単行本 小海はこの詩集でとりたてた修辞を使っていない。小海は老いの嘆きをまことに真率に、韜晦することなく歌っている。これだけ露骨に嘆かれると何か人間…

大崎清夏『指差すことができない』

指差すことができない 作者:大崎清夏 出版社/メーカー: 青土社 発売日: 2014/04/11 メディア: 単行本 切実な詩というものは、訴えかける力が強い一方どこか押しつけがましいものがある。自らの体験をじかに伝えるような詩は、確かに説得力があるが同時に重苦…

文月悠光『屋根よりも深々と』

屋根よりも深々と 作者:文月 悠光 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2013/08/10 メディア: 単行本(ソフトカバー) 文月はこの詩集で主に学校を舞台にしながら、みずからの女性性への意識などをテーマに詩を書いている。詩法としては技術的完成度が高く、テ…

四元康祐『日本語の虜囚』

日本語の虜囚 作者:四元 康祐 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2012/10 メディア: 単行本 「日本語の虜囚」と題された詩集ではあるが、日本語に束縛されている不自由さよりも、むしろ日本語を自由自在にあやつっているという自由さが目立つ詩集である。むし…

ヨシフ・ブロツキー『ヴェネツィア・水の迷宮の夢』

ヴェネツィア 水の迷宮の夢 作者:ヨシフ・ブロツキー 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 1996/01/17 メディア: 単行本 本作品でブロツキーは、ヴェネツィアを訪れたときの心象を美しい詩文に仕上げている。ここにはいかなるストーリーもなく、ただ日記的な断…

杉本真維子『袖口の動物』

袖口の動物 (新しい詩人) 作者:杉本 真維子 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2007/11 メディア: 単行本 杉本の本詩集は文体的な完成度が非常に高い。緊密に練られたテクストは硬質で隙がなく、読む者に心地よい感動を与える。そして、文体と内容は互いに影…

岡本啓『絶景ノート』

絶景ノート 作者:岡本 啓 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2017/08/03 メディア: 単行本 本詩集に特徴的なのは、生きる根拠や哲学が喪失されている点、それに反比例するように生活世界が重視され、ひたすら現在を生きる快楽を歌い上げている点であろう。現…

加藤思何理『花あるいは骨』

花あるいは骨 作者: 風森さわ 出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売 発売日: 2019/09/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 詩的であることと具体的であることはしばしば衝突してきた。具体的に書けば書くほどテクストは小説に近づいていく。抽象…

長谷部裕嗣『箱の中の森』

箱の中の森 作者: 長谷部裕嗣 出版社/メーカー: grambooks 発売日: 2019/09/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る この詩集には長谷部の美学が多分に反映されている。芸術的な美学というより生きることの美学である。詩の主体はハードボイルドな…

坂多瑩子『さんぽさんぽ』

さんぽさんぽ 作者: 坂多瑩子 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2019/08/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 坂多の詩には家族や田舎が良く出てくる。家族の匂いや土の匂いが濃い詩集である。生まれ故郷を散歩していると、至る所に異次元への入…

『田野倉康一詩集』

田野倉康一詩集 (現代詩文庫) 作者: 田野倉康一 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2016/08/12 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 詩は言語による美的構成体である。もちろん「美的構成体」といってもその定義は様々になされるで…