albatros blog

広田修の書評とエッセイ

三角みづ紀『隣人のいない部屋』

 

隣人のいない部屋

隣人のいない部屋

 

  本詩集に充満しているのは人間の執着心のようなものだと思う。三角は間柄に依存し、病に依存している。この依存心や執着心が人間の業を表しているようで、とても生臭い詩集が出来上がっていると思う。ひたすら人間の匂いがする、そういう詩集だ。だから記述も透明なようでとても濁っている。

 三角にとって隣人は居てほしい存在だし居て当たり前な存在だ。だからこそ隣人がいないことが特別なこととして詩集のタイトルとなっている。隣人にどこまでも依存していくこと、そして滅びの予感の中に耽溺していくこと、そういう世界が展開されていて、幾分閉鎖的な詩集となっている。だが、閉鎖的であるからこそそこに住まう人間はとても人間の匂いがするのである。