風景の細やかな描写が目を引く詩集。もちろん風景だけではなく、他人や自分の身体などもテーマになっているのであるが、大体において即物的に書かれている印象が強い。ここで描かれているのは、外界を感受する喜びだと思う。何気ない風景でも、良く眺めると感受することの喜びを生み出すような襞に満ちている。そういった風景を感受する喜びに駆動されてこれらの詩編は書かれているのだと思う。
人間をこの世の中心に置くと、風景を圧倒的に占めている植物の存在を忘れがちだ。この詩集が「グラス・ランド」と名付けられているのは象徴的であって、大地は何よりも植物の領土なのである。植物の領土として大地をとらえなおし、その視座から風景をとらえ返しその感受の喜びを謳いあげるということ。これは単なる花鳥風月といった感受性とは違い、もっと形而上学的で西洋的な感受性だと思う。だからこその「グラス・ランド」なのだろう。これはあくまで英語で題されなければならなかった。