albatros blog

広田修の書評とエッセイ

池下和彦『大切』(思潮社)

大切 作者:池下和彦 思潮社 Amazon 老齢の方の詩集だが、若々しい感性を感じさせる良い作品だった。なんというか、屈折や韜晦などのない素直な生への感動をつづっていて、非常に純粋な気持ちで書かれた作品群なのだと思われる。詩人というものはたいていすご…

草野理恵子『手の紐』(しろねこ社)

草野理恵子の本作においては、人間の身体が様々に変形などする。草野の詩は何らかの寓意を担っていると思われるが、それはなんだろうか。 一つ思ったのは、身体の変形は本来なら強い痛みを伴うはずのもので、読んでいてもうっすらと仮想的な痛みのようなもの…

運動

さて、最近体調を崩し気味なので、妻と相談して運動をこまめにやることにしました。もともと私はウォーキングや筋トレを趣味としていましたが、ここ4年くらいできていませんでした。ウォーキングと筋トレの趣味を復活させ、こまめに運動をすることで代謝をあ…

風邪

昨日は朝起きたらすごく具合が悪く、お休みにしました。風邪の症状で、のどが痛く微熱があり、鼻水が出てめまいがする。医者に行ったら、そんなに熱が出ていないから風邪だろうが、もし高熱が出るようだったら連絡するように言われました。のどの薬とか解熱…

日記

ある件について。私は自分にも非があると思っているので、懲戒処分でも何でも甘んじて受けます。自分に非があるのならちゃんと償うべきだと思います。私は疑われるようなことをしてそのことによってたくさんの人に多大な迷惑をかけた。それだけでも非難され…

体調回復

さて、二日間休んでだいぶ体調が回復したようです。あとは、夜だけ残業するように労働時間をコントロールします。 私は三人家族を一馬力で養っています。当然稼ぐお金が出ていくお金より足りないです。書籍の購入代はだいぶ減りましたが、ちょっとある件で非…

働きすぎ

さて、8月から夜も超勤をするようになりました。朝始発の電車で出勤するなどをなくして、朝の超勤は1時間半にとどめ、夜1時間15分の超勤をするように夜型にシフトしました。 ところが、これを3カ月続けたところ、体調を崩してしまい、激しい疲労感で布…

閻連科『太陽が死んだ日』(河出書房新社)

太陽が死んだ日 作者:閻 連科 河出書房新社 Amazon 虚構が現実に闖入してくる悲劇を描いていると思った。物語の舞台では人々は夢遊となり、夢うつつの状態で暴行や略奪などを繰り返し、物語の舞台は混乱で収拾がつかなくなる。夢というものは虚構のものであ…

日記

この一年半、本当にいろんなことがありました。いろんなことがありすぎたので、後々この経験を生かしていきたいです。反省や後悔することもあります。学んだこともたくさんあります。なんというか、人生観が変わるというか、そのくらい大きな経験でした。私…

九段理江『しをかくうま』(文芸春秋)

しをかくうま (文春e-book) 作者:九段 理江 文藝春秋 Amazon 脱魔術化が完了したかのように思える現代世界の中で、それでも呪術的な部分を太古から連綿と継承していることを示しているように思える。人と馬とのかかわりを、太古から現代にいたるまでたどって…

高行健『霊山』(集英社)

〔2H8B〕霊山 高 行健 ノーブランド品 Amazon 非常にスケールが大きく格調の高い作品である。格調の高さは何から生み出されているのか考えてみたが、それは物語を生み出す教養と倫理意識、美意識から生み出されているのではないかと思った。つまり、格調の高…

残雪『突囲表演』(河出書房新社)

突囲表演 (河出文庫) 作者:残雪 河出書房新社 Amazon 社会がカオスであることを、ある男女の姦通をめぐるゴシップでもって示している。この男女というものが、そもそも年齢について奇怪極まる諸説紛々があったり、外見について奇怪極まる諸説紛々があったり…

藤井晴美『ズボンを穿いて消える』(七月堂)

藤井晴美の本作は、徹底的に「実」を排して「虚」で充満している。世間的には重宝される「実」というものを極力排して、虚無や遊戯により作品を充満させること。宇宙が真空で満たされているように、本詩集は虚無で満たされている。虚無により何らかの深淵に…

伊藤芳博『星を拾う』(思潮社)

星を拾う 作者:伊藤芳博 思潮社 Amazon 本作が詩として読ませる工夫をしているのは「切断」においてだと思う。一つの単語を途中で切断したり、()や「」で詩行を切断したり。詩にわかりやすいリズムを生み出しているこの切断によって、詩に弾むような読む楽…

ソン・ウォンピョン『アーモンド』(祥伝社)

アーモンド 作者:ソン・ウォンピョン 祥伝社 Amazon いつもとは毛色の違う本を一冊。本屋大賞の本だと知っていたら借りなかったと思う。いつも純文学ばかり読んでいると、こういうライトな本はとても物足りない。私が思うのは、大衆文学と純文学の違いはどこ…

ハン・ガン『別れを告げない』(白水社)

別れを告げない 作者:ハン・ガン 白水社 Amazon ハン・ガンの小説は痛みに満ちている。それは個人の感受性の痛みであったり、個人の肉体の痛みであったり、社会の痛みであったり、世界の痛みであったりする。そのように次元の異なる痛みが互いに構造を作って…

アブドゥルラザク・グルナ『楽園』(白水社)

楽園 (グルナ・コレクション) 作者:アブドゥルラザク・グルナ 白水社 Amazon 本書は、東アフリカの文化や歴史、人々の思想や生活を伝えてくる淡々とした小説である。日本とは大幅に異なるその社会の構造や人々の振る舞いについていろいろと学ぶところの多い…

妄想はない

さて、私は医者から幻覚・幻聴・被害妄想の類はないと診断されています。診断書を出してもらってもいいです。 自分に都合の悪いことを私の妄想だと言って片付けようとするのは非常に悪質です。いじめの常とう手段で、加害者は自分でいじめておきながら、被害…

金井雄二『蒼い森の奥へ』(思潮社)

蒼い森の奥へ 作者:金井雄二 思潮社 Amazon 金井雄二の本作は、人生というもの、家族というものがいずれも両義的であり、かつ人生と家族は密接不可分だということを簡潔な文体で示している。年老いて振り返ってみると、人生の各段階はそれぞれに矛盾している…

ジョゼ・サラマーゴ『見ること』(河出書房新社)

見ること 作者:ジョゼ・サラマーゴ 河出書房新社 Amazon 政府と人民との争いが、ものすごく精緻に描かれている。この記述の密度は圧倒的であり、権力側と人民側が軋轢を起こすだけでものすごくたくさんの出来事が起こるということがありありと伝わってくる。…

ハン・ガン『引き出しに夕方をしまっておいた』(クオン)

引き出しに夕方をしまっておいた (セレクション韓・詩) 作者:ハン・ガン CUON Amazon ノーベル賞受賞者のハン・ガンの詩集である。静寂が語りだすとまさにこんな言葉になるのではないかという言葉たちだ。沈黙を言葉にするとまさにこんな言葉になる。不在、…

アニー・エルノー『場所』(早川書房)

場所 作者:アニー エルノー 早川書房 Amazon アニー・エルノーは、この小説で自らの父親の輪郭を上手に描き出している。学問を嫌い、世間体を気にし、他人から見られても恥のないように気を配っていた父親の姿を、まことに輪郭をくっきり際立たせて描いてい…

アニー・エルノー『シンプルな情熱』(早川書房)

シンプルな情熱 (ハヤカワepi文庫) 作者:アニー エルノー 早川書房 Amazon 本書は、アニー・エルノーが自らの恋愛について事細やかに描いた作品である。アニーの作品には誠実さと明晰さが見て取られる。誠実さによって相手と真摯に向き合い、相手との距離を…

アニー・エルノー『ある女』(早川書房)

ある女 作者:アニー エルノー 早川書房 Amazon アニー・エルノーによる自身の母親の生涯。一人の人間が生きる、その人生が存在するというだけで、とてつもない熱量・エネルギーが放出されるのだということに気付かされる。本作は、母親の生涯を丁寧に生々し…

アニー・エルノー『若い男、もうひとりの娘』(早川書房)

若い男/もうひとりの娘 作者:アニー エルノー 早川書房 Amazon 簡潔な文体によって他者を多角的にしなやかに描いている。著者はきわめて強靭な精神を持っており、他者と真摯に向き合い、その他者とのかかわりをありとあらゆる角度から描いていく。若い男に…

ヨン・フォッセ『朝と夕』(国書刊行会)

朝と夕 作者:ヨン・フォッセ 国書刊行会 Amazon 本書は、さながらクラシック音楽の一幕を聴くかのような圧倒的な出来栄えの作品だった。ヨハネスの誕生については幾分速めで感動的な楽章。ヨハネスの日常生活についてはなだらかでリラックスできる楽章。ヨハ…

夏本番

夏本番となり毎日暑いです。子どもは夏休みに入り、毎日家にいるので妻の負担が大きいです。最近義実家でも体調が悪いなどの理由で援助が断られることが多く、私の方で病院の送り迎えなどやらなければいけなくなりました。妻も運転の練習をはじめ、いよいよ…

ヴァージニア・ウルフ『波』(早川書房)

波〔新訳版〕 作者:ヴァージニア・ウルフ 早川書房 Amazon モダニズムの手法の一つとして分析があると思う。本作は分析の手法を最大限に生かし、文学の異化作用を如実に発揮させている作品である。波や若者たちの暮らしがいろんな角度から分析され、通常とは…

ハン・ガン『ギリシャ語の時間』(晶文社)

ギリシャ語の時間 作者:ハン・ガン 晶文社 Amazon 言葉を失う女性と視力を失うギリシャ語教師との物語。女性は言葉だけでなく自らの子供も裁判で失ってしまうし、教師はかつて親友を失っている。とにかく喪失の物語だ。我々は存在が完全であることにより自尊…

未来に向けて

さて、過去は変えられないので、何かあったのなら謝罪や反省、補償などを続けていくほかありません。それよりも大事なのは未来に向けて何をすべきかです。私は関係が悪化してしまった人がいるので、その人との関係の修復を努めたいです。職場環境が悪化する…