谷川俊太郎を読んでいたのは20歳くらいの頃だろうか。当時私は詩と哲学が読めるようになればすべての本が読めるようになると思って、詩については角川文庫の谷川俊太郎詩集をよく読んでいた。その後現代詩全般に触れるについて再び触れることもあったが、本格的に読み直したのは久しぶりである。
谷川の詩は実に広い領域を覆っていて、それは彼の人生経験や詩作経験に裏付けられている。若者の心から老いた者の心まで熟知し、人間の感情と思考を熟知し、そのうえ詩の書き方を熟知しているからこそこのような普遍性のある作品が出来上がっているのだ。幅広いテーマに深く切り込んでいき、一つ一つの詩に発見がある。谷川の詩は発見や思想に満ちていて、その点において私は谷川を強く支持するものである。私の詩作の根底にあったのはいつも谷川の詩作であったのだな、と強く実感した。