albatros blog

広田修の書評とエッセイ

ロブ・グリエ『弑逆者』

 孤島に住み工場で働く若者の異様なほどまで感受性が研ぎ澄まされた日常。国家の政治的な動きも進む中、些細なことで自らの内奥まで突き刺されるかのような描写が並ぶ。この憂鬱で鋭い日々。独特の雰囲気を醸し出す作品であり、ロブ=グリエの出発点を改めて確認した。

 多分、感受性と政治というものは相性が良い。これは私が前から思っていることで、感受性の鋭い人ほど世間の空気の動きにも敏感なのである。政治的な動きに主人公が関心を強く抱いていることも、彼の憂鬱と鋭さに関係しているのだと思う。どちらも情緒的で空気を感じることと密接に関連している。