albatros blog

広田修の書評とエッセイ

町屋良平『ふたりでちょうど200%』

 

 二人の若者のストーリーがどんどん変奏されていく音楽的な作品だ。ライトモチーフはいくつかあるが、それがそれぞれの編ごとに変奏されていき、変奏曲のような音楽的な構造を作り出す。この小説について意味を見出そうとすると難しいが、そもそも意味とか言う次元でとらえるべき作品なのではなく、音楽的構造の響きを楽しむ作品なのだと思う。

 この小説は小説でありながら意味を脱ぎ捨てようとしていると私は感じる。もちろんこの作品にも意味はある。だが、意味という次元でとらえようとするとどうしてもあふれてしまう余剰にこそこの作品の神髄はあるのだと思う。それが変奏曲における音楽的な響きあいの次元であり、この作品はそれぞれのストーリーが互いに互いを変奏しあうその響きを楽しむべきものなのだと思う。このような試みは面白いので小説でもどんどんやっていってほしい。詩ではしばしば見受けるが、小説でこのような構造を持つものは珍しい。