albatros blog

広田修の書評とエッセイ

マンディアルグ『薔薇の葬儀』

 

  マンディアルグの小説は通俗的に言ってしまうと「エロ・グロ」の世界である。だが、彼の小説は「エロ・グロ」を目的としているわけではない。官能や死に伴う鮮烈なイメージで小説世界を強化していこうという営みが見えてくる。バタイユ的な消尽の思想がもっともフィットするのかも知れない。死の演技や交通事故、近親相姦など、なかなかきわどいモチーフが頻出している。

 もちろん、描写の強度や物語の作り込みについては一流である。そのうえで死や官能を扱っているから作品が俗っぽくないのだ。だが、やはりマンディアルグの作品の魅力はその鮮烈に広がるイメージであろう。死や官能の心を震わせるイメージが積み重なることで作品の愉悦が生み出されている。時間の作家というよりはイメージの作家である。これだけ強度のあるイメージの連続が読めるのなら、彼の作品をあと何冊か読んでみようと思った。