albatros blog

広田修の書評とエッセイ

川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』

 

 川上未映子の作品がこれだけのポピュラリティを得ているというのは結構面白いと思う。というのも、川上はどちらかというと王道の小説というよりも論理性の強い小説を書くからだ。川上の作品の登場人物は思想的なセリフを語ることが多いし、プロットのつくりにもロジックを感じさせる。このようなロジックの書き手が多くの読者を得ていることが非常に興味深い。

 確かに、扱っているテーマは、特に女性の身体性にじかにまつわるものが多かったりして、女性の共感を得やすいのかもしれない。だが、それにしてもそこには必ず思想性やロジックが織り込まれている。読者の多くがそのロジックに惹かれているとは思わないのだが、小説の基本的なところを十分体得したうえで、あくまで川上自身のテイストとしてロジックがあるという整理だろうか。川上は本来なら異色な作家ということで済まされるはずだったと私は思っているが、このポピュラリティの正体をいまだつかめずいる。