albatros blog

広田修の書評とエッセイ

ウエルベック『素粒子』

 本作でウエルベックは目くるめく文学体験を創出している。本作を読むということは、まさに文学でしか得られない快楽を得るということだと思う。そこには恍惚があり、消尽がある。現実世界では得られないエロスとタナトスの噴出が本作には描かれていて、これでもかと繰り返される性的描写や革命・人類滅亡のプロットがフィクションとしての強度を否応なく強めている。

 少し古い本ではあるが、今読んでも当時本書が世に出たときの世界中の興奮が想像されるような気がする。そのくらい、衝撃的で、人間の性的欲望や破壊欲望を満たしてくれる。文学でしか創出しえない快楽を本作は与えてくれるのだ。