albatros blog

広田修の書評とエッセイ

佐藤厚志『荒地の家族』

 

 人生のどうしようもなさ、人間の不自由さを描いた作品だと思う。主人公は大地震に起因して最初の妻を亡くし、再婚した妻は流産して離婚となる。労働現場でのハラスメントの描写もある。このように、人間の運命というのは人間の力の及ばないところにあるというのが、大地震がもたらした教訓でもあったはずだ。その教訓を、すごくシンプルかつ丁寧に描き切っていること、そこにこの小説の価値があると思う。

 人間は完全に自由な存在ではない。人間の力の及ばないことは、例えば自然災害とか、人とのめぐりあわせとか、胎児の生育とか、いろいろと存在する。そういった人間のフリーハンドに任されていない硬い運命というのはたくさん存在し、人生というものは決して柔軟ではなくむしろ極めて硬いのかもしれない。人生は柔軟であること、未来は可能性に満ちていること、そういうことはよく語られるが、人生がむしろ硬くて未来も限定されていることについて、人はあまり語りたがらないのかもしれない。