albatros blog

広田修の書評とエッセイ

2021-10-05から1日間の記事一覧

弱者の声

詩は誰からも掬い上げられない弱者の声を聴くものだ、と言われたりしますが、むしろ詩は弱者の声ばかり聴いてきたと思います。詩を書く人間が基本的に弱者だからです。だからこのテーゼというのはまさに詩人のルサンチマンの表現であって、このルサンチマン…

阿部和重『無情の世界』

無情の世界 (新潮文庫) 作者:阿部 和重 新潮社 Amazon 阿部和重は本作品でかなり極端に行動的で破壊的な人物群を描いている。社会規範に反した暴力的な行為を平気で行う者たち。だが、ここでは社会規範というよりも己の内なる規範である超自我をいともたやす…