さて、昨年読んだ本のうちよかったものを紹介します。
1.東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)
世の中がギスギスしているのは、人の話を聞くことがうまく機能していないから。人の話を聞くためにはまず自分の話を聞いてもらう必要がある。臨床家ならではの現代社会への処方箋。
とにかくスケールの大きな話。地理的にも時間的にも大きな広がりを持つ作品世界を緻密に描いていく様は圧巻。
この時代に早くもこんなに先進的な思想を展開していた思想家がいたことに驚いた。背景にあるプラグマティズムの重要性も感じた。
4.閻連科『年月日』(白水社)
人生全体の比喩になっている名作。これほど簡勁でありながら、奥深く力強い。一生の滋養となる一冊。
5.霜山徳爾『人間の限界』(岩波新書)
今となっては思想に新しさは感じないが、碩学による重厚なエッセイ。今でもこのような本が読めるところが岩波新書の良いところ。
知性と感性と教養を備えた著者の極上のエッセイ集。エッセイの快楽とはこのようなものだろう。素晴らしい。
LGBTとは違った文脈から、人間同士の恋愛として女性同士の恋愛を描く。あくまで性の問題は政治の問題ではなく人間の問題である。
8.将基面貴巳『愛国の起源』(ちくま新書)
パトリオティズムは狭い愛国主義とは異なる。コスモポリタンな次元に開かれていく議論の展開は圧巻。
9.将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』(中公プリマー新書)
従順であることがジェノサイドを招いたりする。政治哲学の根本的な問題を分かりやすく解説。
10.諸富祥彦『「本当の大人」になるための心理学』(集英社新書)
仕事をしていくうえで参考になった本。変わることと変わらないことを見極め、自ら考えていく大人。