albatros blog

広田修の書評とエッセイ

アン・エンライト『グリーン・ロード』

 ある家庭に生まれてそれぞれの人生を歩んでいたきょうだいたちが、生まれ育った家が売りに出されるとのことで、母親のもとに再び集う。この小説は、そのような、人と人との離合集散を描いている。人生は人と人との離合集散の繰り返しであり、出会ったり別れたり、別れた人と再び出会ったり、そういう幾筋もの人生が交じり合ったり離れたりする繰り返しなのである。人生のそのような側面を誇張した形で描いているように思った。

 それぞれに別々の人生を歩んでいるきょうだいたちの描写が詳細であり、それらのきょうだいたちが集まるところには一抹の感動がある。そして母親の失踪など、なかなか面白い筋の展開だった。叙述には密度があり、読後にはさわやかな感動があった。