albatros blog

広田修の書評とエッセイ

村田沙耶香『しろいろの街の、その骨の体温の』

 まず、この小説は、小学校4年生から中学校3年生までという特異な時期を設定している点に注目したい。いわゆる思春期であるが、思春期よりも若干前であり、この後も思春期は若干続く。このような時期を題材にした作品を他にあまり知らない。この時期、人間はあまりにも幼く、あまりにも中途半端であり、それを描くことにはかなりの困難があったと思われるが、見事に描き切っていると思う。小学校から中学校への移行に伴う微妙な人間関係の変化、いわばスクールカーストが導入されていく過程、そのスクールカーストでの人間関係、特にいじめなどについて、よく描いている。また、そこでの主人公の幼馴染との恋愛の経緯が主題となっている。初めは遊びでしかなかった関係が、二人とも第二次性徴を迎え、心理的にも成熟していくことできちんとした恋愛関係になっていく。とにかく、この時期をあえて描いたことに拍手を送りたい。