albatros blog

広田修の書評とエッセイ

えがしらみちこ『ゆきみちさんぽ』

 

ゆきみちさんぽ (講談社の創作絵本)

ゆきみちさんぽ (講談社の創作絵本)

  • 作者:江頭 路子
  • 発売日: 2016/11/10
  • メディア: 単行本
 

  女の子が冬のお外を散歩していろんな発見をするお話。ここにあるのは愛と感受性である。女の子は冬の外の世界の音を聞いて、それが何に由来するか発見し喜んでいる。外へ向かっていく感受性が強く働き、それが発見の喜びを導いている。女の子を包む自然や動物や人々は愛に満ち、女の子は終始笑顔だ。最終的にはお母さんがやってきて絵本は終わりとなるが、お母さんこそが全ての源泉であり、最大の愛情であり、外へ向かっていた女の子を再び家の中へと回帰させる存在なのである。

 雪は冷たいし冬は寒い。だがこの絵本はそんなことを微塵も感じさせない。冬の雪の情景でしか目にすることができない事物を感受することの喜びに満ち、それらの事物の愛情に満ちている。そしてこの喜びと愛情の源泉としての母親の存在というものが設定されている。母親の巨大な愛の中に閉じこもっている時代の幸福な記録であろう。