神社の結婚式の披露宴を取り仕切るスタッフの話。主人公は若く、自由を好み、辛気臭いことを嫌う。下手をすればただのラノベとなってしまうところをさすが古谷田は上手に描き切る。主人公はバイトをしながらみるみる頭角を現し、そういうところに若さのみなぎるようなエネルギーが垣間見れる。一方で主人公は自らの携わっている仕事を喜劇的なものだとみなして嘲笑している。仕事が空虚だからこそ本気で取り組めるという逆説が可能なのは主人公が若いからだ。逆に、仕事の意味や意義がしっかりわかってしまったら主人公は仕事をやめていただろう。
主人公を取り巻く人物たちの描写も卓越しており、完成度の高い物語となっている。終始若者の感受性に彩られた作品ではあるが、決して陳腐なものではなく、様々な陰影によって複雑に揺らめく登場人物の心理が興味深い。ラストの一人結婚式も、結婚式の意味を問いかけるようであり面白かった。我々大人の視点から見ると、若者の結婚を空虚なものだとみる視点の方が逆に新鮮に見えるのだから、歳は取りたくないものである。