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広田修の書評とエッセイ

干刈あがた『ウホッホ探検隊』

 

ウホッホ探険隊 (河出文庫)

ウホッホ探険隊 (河出文庫)

 

  80年代当時に発表された小説だが、そのころはまだ離婚が珍しかった。その時世にあえて離婚の問題を正面から取り上げること。この小説はさまざまな行為をなしているように思う。

 この小説では離婚の深刻な面も描かれる。と同時に、子持ちのシングルマザーのユーモラスな日常も描かれる。このようにして、離婚の現状はこういうものなのだ、と社会へと投げかける行為をこの小説は行っている。それは、離婚というものを正当化する行為かもしれないし、離婚の問題を提起する行為かもしれないし、離婚の現実を広く周知する行為かもしれない。

 小説が明確に行為をなしている例は珍しいと思う。もちろんあらゆる小説は何らかの行為をなしているわけであるが、この小説のように行為性が際立っているのは面白い。だが、小説とは耽美的世界に漂うものではなく、このように社会の中で行為するところに神髄があるのかもしれない。