albatros blog

広田修の書評とエッセイ

松浦理英子『最愛の子ども』

 女子高生同士の性愛を描いた作品。性愛と言ってもそんなにディープなものではなくて、一応男女共学とはなっているものの教室は男女に分かれていて、男子のみのクラス、女子のみのクラスから構成されている高校における女子クラスの日常といった具合である。女子クラスの日常ではあるが、それは多分にエロチックであり、キスであったりサディズムマゾヒズムなどが現れてくる。女子高生だけの社会だからこそ起こる女子高生同士の愛の関係が描かれている。

 本書は極めて甘美な雰囲気を漂わせている。華やかである一方で泥臭く、とても獣じみている。何というか、女子だけの社会だからこそ見えてくる女子の本能的な部分というものが描かれていて、ある意味男女が共生する社会にはない独特の女子の本能なのかもしれない。男女が共生するということは、男子のみ女子のみだと発生する毒のようなものを解毒する意味合いがあるのかもしれない。ある意味女子中毒ともいえる本である。