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広田修の書評とエッセイ

ハロルド・ピンター『景気づけに一杯/山の言葉ほか』(ハヤカワ演劇文庫)

 

ハロルド・ピンター (2) 景気づけに一杯/山の言葉 ほか(ハヤカワ演劇文庫 24)

ハロルド・ピンター (2) 景気づけに一杯/山の言葉 ほか(ハヤカワ演劇文庫 24)

 

  全体主義などを風刺した政治劇と、言葉が自由に踊り出すような人間劇が特徴。

 ハロルド・ピンターの戯曲においては、言葉が自由奔放に動き出している。登場人物は思いのたけを吐き出すし、言葉の熱量も多い。また、登場人物は不条理な発言をしたり、誰かの幻想なのではないかと思われるものもある。いずれにせよ、登場人物はみずからの状況に作られるというよりは、自ら状況を作り出しているのである。

 サルトルの言う実存の自由がピンターの戯曲には現れているように思われる。人は何物にも規定されず、自ら自らの存在を作り出していく。それだけの人間の自由さを思わせるセリフの自由度である。もちろん、政治を風刺した劇についてはそれが幾分弱まるが、それもサルトルのアンガジュマンの圏内に収まるのかもしれない。

 いずれにせよ、ピンターは二十世紀に巨大な足跡を残した劇作家だと思う。