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広田修の書評とエッセイ

篠崎勝己『死ねない魂のための音楽』(龍詩社)

 篠崎の本作においては、詩が哲学をしている、あるいは哲学が詩を書いている。主体と客体の問題、生と死の問題、言語と対象の問題などが、軽やかに思考されているのが本詩集だ。詩の形式で扱われた哲学は独特の様相を呈し、もちろん厳密な論理性は備えていないし、様々な概念の日常的な癒着も見て取れる。

 私は思想を語る詩が好きだし、このように明白に哲学を扱う詩も好きだ。詩においてあらわれる哲学というものの独特のたたずまいが好きだ。厳密さを排されながらも一定の論理性と体系性を備えた哲学的な詩というものの硬軟交じり合った味わいが好ましい。

 篠崎の今後の展開も楽しみにしている。