albatros blog

広田修の書評とエッセイ

楊逸『金魚生活』

 すごく密度の高い小説だと思った。仕事のことや家庭のこと、しかもその仕事には独特の事情があり、家庭にも独特の事情がある。どうやら一筋縄ではいかない物語なのである。だが人生とは実際にこのくらい複雑で密度の高いものだ。実際に人間が生きる人生の密度に近づけて作品を書いているように思える。

 フィクションは基本的に隙間だらけである。我々の実人生は、もっと細部が充填されているのである。その細部の充填に少し近づいている作品のように思った。もちろんスカスカのフィクションでも楽しめるのだが、より高密度でより複雑で実人生に近接してくるもの。そのような小説として読んだ。