この本はエッセイと自伝的小説の中間の体裁をとっている。ところどころフィクションも混じり、読み物としての面白さを作り出そうとしている。子供が二人いるシングルファーザーと付き合うことになった著者の育児に関する格闘と書店の仕事について書かれている。ここで提起されている問題は多岐にわたる。結婚制度の問題であるとか、片親で育てることの問題、家族の問題、教育の問題、それが、シングルファーザーの彼氏と付き合うという微妙な関係性の中で問われている。著者はいろいろ悩みながら暮らしていくわけであるが、そこに正解は存在しない。著者もまた正解を提示しているのではなく、悩みは悩みのまま問いとして放り出している。
文体は軽やかで読みやすく躓くところがない。それでありながら心理の機微を上手に描いている。純文学ほど深刻ではないが、かといってライトノベルほど軽薄ではない。エッセイ独特の問題提起の仕方である。同じテイストの書き手としてはブレイディみかこ氏などがいるだろう。