この絵本ではカバの怠け者で食いしん坊で寝坊助、総じて愛すべき点が描かれている。読むものはカバに対して親愛の情を抱き、カバを近くに感じる。カバは身近な誰かさんかもしれないし、読んでいる子供その人かもしれない。自分や近しい人に似たカバという存在がとにかくユーモラスで愛すべき存在だということが描かれる。
このユーモラスであるがゆえに愛すべきであるという感情がこの絵本でははぐくまれ、その愛情は身近な人へと向かっていくのであろうが、実際にこの絵本で描かれるカバという存在はグロテスクでもある。カバの絵としての描き方にも工夫がなされ、肌のテクスチュアにもこだわりが見られるし、カバの大きさを強調してもいる。カバは異形のものでもある。この異形の他者がユーモラスで愛すべきものでしかも身近にいる。何か子供の生活世界を象徴していないだろうか。