albatros blog

広田修の書評とエッセイ

二宮由紀子、あべ弘士『ねえどっち?』

 

  ある日人間の子どもがやってきて、シマウマに「あなたは白い縞のある黒い馬なのか黒い縞のある白い馬なのか?」という問いかけをして去ってゆく。シマウマは答えがわからなくて、この論理的混乱はキリンやサイにまで波及していく。だが結局ライオンから逃げること、ご飯を食べることと寝ることという動物たちの日常に戻っていく。

 シマウマが白い馬なのか黒い馬なのかという論理的な遊戯を人間の子どもが動物の世界にもたらすというのは象徴的である。それは知恵の一種ではあるが、かなり形而上学的で実益をもたらさない。人間の世界では有用なものかもしれないが、生存がかかっている動物の世界では混乱しかもたらさない。動物たちは結局そんな論理的遊戯など忘れて日々の生存維持に帰っていくのである。

 人間は知恵により学問を発展させることにより高度な文明を生み出した。だが動物たちの世界には知恵はいらない。日々生き残ることが全てである。この二つの世界が交わるところに起こる混乱は、インテリと大衆といった問題にも見ることができようか。