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広田修の書評とエッセイ

柳田邦男『妻についた三つの大ウソ』

 

妻についた三つの大ウソ (新潮文庫)

妻についた三つの大ウソ (新潮文庫)

  • 作者:柳田 邦男
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1993/04
  • メディア: 文庫
 

  航空機事故や医療技術のノンフィクションで知られる柳田邦男のプライベート・エッセイ集。本エッセイは、一つ一つがそれぞれ一つの記事のように構成されていて、そこにはドラマがあり結論があり論理がある。エッセイには作家の文体が如実に表れるものであるが、柳田のノンフィクション作家としての文体が私生活のエッセイにも顕著に表れているのが分かる。

 何気ない日々のあれこれや、障碍者についてのノンフィクション的エッセイ、人生への深い洞察など、エッセイのテーマは多岐にわたるが、なかでも「人生の復習」は優れたエッセイだと思った。音楽というものが自分の人生の出来事と分かちがたく結びついていることをこれほど的確な言葉で表現したものはめずらしい。表題にある「妻についた三つの大ウソ」はなかなかほほえましい話だった。