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広田修の書評とエッセイ

古川真人『ギフトライフ』

 現代日本の様々な問題を解決しようと抜本的な対策をした近未来の日本の物語。少子化対策は本格的になり、デジタル化が進み貨幣はすべてポイントになり、民営化は徹底され「企業」の独裁体制になっている。また、そこでは障碍者安楽死も行われていることも示唆される。

 日本がこのような形に変わるとはにわかには考えづらいが、現代課題とされていることを思いっきり改革すればこのような社会になるというディストピア小説である。いや、これがディストピアかどうかもわからない。このような社会で皆が幸せなのかもしれない。この作品が提起している問題は、社会を改良しようとすることが必ずしも本当の社会の改良につながらないかもしれないという問題である。確かに現代日本の抱える問題の対策を徹底的に講じている近未来の図かもしれないが、その社会はとてもグロテスクである。どのような社会を形成していくかという問題については、本当に慎重に議論を尽くし、かつ大胆に改革していくべきであろう。