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広田修の書評とエッセイ

瀬尾まいこ『卵の緒』

 

卵の緒 (新潮文庫)

卵の緒 (新潮文庫)

 

  家族の絆を描いた感動的な二つの物語。家族というのは決して血縁だけで成立するものではないことは、夫婦に血縁がないにもかかわらず夫婦が家族になることから明らかであろう。家族になるとは、生活のこまごましたことを共有し、人生の様々な問題についてともに悩み、そういう人間の生きることの核になる部分を共有することから生じるのである。

 「卵の緒」では、主人公の母親は実の母親ではない。そうでなくても生きること核を共有することで家族となるのだ。「7's blood」では主人公と弟は異母姉弟である。実際の姉弟でなくとも生きることの核を共有することが彼らを家族とする。これら訳ありの家族の形態は、訳ありであるからこそ一層家族としての強度を持ち、その家族であることが確認されたときに強い感動が生じる。苦しい人生を生きながらも根源的な部分で互いを支え合える人間同士は、たとえ血縁がなくとも家族となるのだ。