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広田修の書評とエッセイ

乗代雄介『十七八より』

 

十七八より

十七八より

 

 この作品は乗代のデビュー作である。デビュー作ゆえの余裕のなさは感じるのだが、その余裕のなさは作品を書くにあたって自らの能力を最大限発揮しようとしているところから生じるのだと思う。この作品はところどころ難解であり、脳の稼働領域ぎりぎりのところを走っているように感じられるが、それが独自のスリルを生んでいる。そして主人公の少女とおばとの文学談義。このペダントリーがまた乗代の特徴でもあるわけだが、とても作品の虚構性と作為性を高めていて面白い。乗代は頭脳をフル稼働して遊戯しているのである。その文学遊戯の産物がこの作品だ。文学遊戯のスリルと快楽を十分感じられる作品なのである。

 女子高生の日常などそのまま書いたらただ退屈なだけの青春小説になってしまう。そうなることを回避し、ディテールの書き込みとペダントリーの盛り込みによりしっかり作品の虚構性を作り出す。この文学遊戯に付き合うのはなかなか快楽的でスリリングだ。