ロジェ・グルニエが若いころの記者体験をもとに、様々な個性的な記者や人物を配置して鋭利に物語を刻んでいる本である。記者たちは社会人として一様な動きをするわけでもない。むしろ、登場する記者たちにとって記者としてのパブリックな人生は人生のごくわずかにすぎず、それ以外の人生こそがその人らしさを如実に示している。犯罪組織との駆け引きをしたり、妻との抜き差しならないやり取りをしたり、そういうところの方が記者であることより重要なのだ。
現代日本のサラリーマンは割とみんな似たような行動をとる。それは日本が同質性が強く同調圧力が強いからだ。だがそれであっても、現代日本でさえもパブリックな職業の領域でそれぞれの人々の個性は陰に陽に現れている。所詮パブリックな領域とか言って取り繕ってみてもその人の個性を滅却することなどできず、むしろその人らしくあることがかえって仕事にとってプラスになったりする。そんなことを考えさせてくれる小説だった。