燃え殻の、つぶやきやエッセイや物語を集めた人生の回顧録。基本的に弱者の悲しみを書いている。傷ついた人間、感じすぎてしまう人間の悲哀をつらつらとしたためている。そこに感性の鋭いひらめきがあり、はっとさせられる人生の洞察がある。
燃え殻にとって社会的なことは個人的なことと何も変わらない。いじめを受けたり仕事で嫌な目に遭ったりすることは、恋人と別れたり家族が死んだりすることと何も変わらない。社会的なものをあくまで個人的な次元で、一つの変わらぬ傷として感受するということ。これは正しいと思う。そもそも社会もまた人間関係の束なわけであり、そこで傷つくこととプライベートな領域で傷つくことに本質的な違いはない。この、プライベートとパブリックの相対化、どちらも同じ傷の発生装置とみることにおいて燃え殻は一貫している。そして、燃え殻の感受性はあくまで社会的な悲しみに向かっている。そうでありながら受け止め方は非常に個人的なのだ。ここに個人と社会の面白い回路が見受けられる。