albatros blog

広田修の書評とエッセイ

高瀬隼子『犬のかたちをしているもの』

 

 高瀬隼子のデビュー作。本作の主人公はクールで他人と自分の違いに敏感だ。他人と自分の違いに突っ込みを入れつつ、そこにユーモアを感じ楽しんでいるように見える。中でも、自分と対照的なミナシロさんに対して主人公はかなりの違和感を感じている。だが、違和感が嫌悪に結び付くというより、この違和感に満ちた世界というものをユーモラスに楽しむということ。主人公はそういう生き方をしているように見える。

 個々人の個性を否定するのではなく、もっと高い次元からユーモラスに楽しむという俯瞰した姿勢というのはこれからの世の中に必要とされていくと思う。世の中はすでに多様性に満ちているし、昔からそうだったし、これからはそれが加速していくだろう。その多様性を自分と他人の違いとしてユーモラスに楽しむ感性を持っていると、これからの世の中を生きていくうえでかなり有利だ。周囲と無駄な軋轢を起こさずに多様な世界を楽しみながら生きていきたい。