albatros blog

広田修の書評とエッセイ

キーツ『ゆきのひ』

 

  雪の日、子どもは大喜びする。世界がまるで違ったものに変わるからだ。雪の日、世界は可塑的で幻想的になる。それまで触れることを拒んでいた世界が、線をつけたり自分の体のあとをつけたり雪玉を作ったりできる可塑的な世界に変わるのである。そして雪の白は地上に降りた幻想である。この白は日常世界に破り目を入れ、虚構や幻想を世界に呼び入れる。このような可塑的で幻想的な世界は子供の遊戯にまことに適切だ。ピーターの喜々とした振る舞いからは子供にとっていかに銀世界が魅力的かを雄弁に語っている。

 切り絵や貼り絵を使った大胆な色彩の印象的な絵本である。単純さの中に力がこもっており、絵本の基本的な要素をすべて満たしているかのようだ。わかりやすく、それでいて表現の解像度を落とさない。子どもはこの絵本を読んできっとわくわくするだろう。雪の日のあの気持ちの高まりを共有してとても喜ぶに違いない。