albatros blog

広田修の書評とエッセイ

望月遊馬『白くぬれた庭に充てる手紙』(七月堂)

 望月遊馬の詩はとてもやさしい。この優しさが、様々な事象の領域の境界を取り払って、すべてのものがやさしく交じり合い、曖昧になっていく詩世界を作り出している。望月は、その比喩や通常でない主語と述語の結びつき、認識の仕方により、異なる次元にあるものを相互に交流させていく。例えば内面と外面、人間と自然、個人と社会、そういう隔てられたものの境界をやさしく取り払っていく。そこでキーワードとなっているのが「こども」なのだろう。この「こども」の視点からはすべてがあいまいでやさしく交流し合っている。

 それだけではなく、この詩集には現在の時空と伝承にある歴史との交流も描かれている。詩集もテクストであるが、歴史もテクストである。この詩と歴史という異なるテクストを上手に編み合わせてこの詩集が出来上がっていることも見逃せない。異なり隔てられたものを相互に融解し交流させる優しさこそが望月の強みである。