albatros blog

広田修の書評とエッセイ

結婚して半年

 入籍し同棲を始めてから半年がたつ。私たちは交際期間がそれほど長くなかったため、同棲してからお互いのことをさらによく知るといった感じだった。初めのころは大人しく行儀良かった妻も、慣れてくるにつれて少しずつ自然体で過ごすようになった。
 生まれも育ちも違い、価値観も違う同士、一つ屋根の下で暮らすと常々新しいことの発見だった。大量のコミュニケーションはその都度刺激的で、自分ひとりで生きていたのでは見えなかったことが見えてくるようになった。持っている情報も違えば世界の見方も違う、そんな二人が深くコミュニケーションすれば、当然お互いの視野は広まり視線は深くなる。
 十年勤めた職場を辞め、重い仕事から解放されて新天地へやってきた妻の解放感はよくわかる。「現在が楽しければそれでいい」とのたまう妻は、それでも女性的に現実的で打算的であった。私は男の一人暮らしということもあり、心身ともに不健康な日々を過ごしていたため、結婚は心身の健康につながった。それだけでなく、人生は間違いなく新たなステージに入った。
 一人で暮らす生活から他者と共に暮らす生活へ。二人の折り合わせはまだまだ続いていくが、上手に話し合いながらお互いに落としどころを見つけ、お互いに不満の少ない妥結点を探ることを際限なく続けていかなければならない。結婚とは終わりのない交渉の始まりなのであり、それは結婚から半年たった今でも続いているし、これからも続いていくだろう。