さて、今日は在宅勤務二日目です。前回の在宅勤務では資料の読み込みがとても終わらず、今回も同内容の勤務内容となっています。マニュアルや法制度の読み込みには思いのほか時間がかかり、今回このような機会が与えられてまことにありがたいです。
モディアノ『パリ 環状通り』
主人公はかつて別れてしまった自らの父との接触を試みる。父は相変わらず詐欺じみた稼業に手を染めていて、仲間たちからも軽く扱われている。主人公がかつて父とともに仕事をしていた時も、古書の献辞を偽造するという詐欺稼業をしていた。そのような社会的に全く価値ないような存在である父に、主人公は執着する。
というのも、父という存在は唯一性を備えているからだ。そして、父という存在は自らの存在の根拠の一つである。唯一性を備えた自らの存在根拠というものを現代人の多くは失ってきた。宗教や国家などが意味をなさなくなっていく中で、自らの存在を支えてくれる重要な存在である父というもの。これは社会的にいかに軽んじられていようとも本人にとっては絶対的に重要な存在なのである。主人公の執着はそれを端的に示すだろうし、それは読者である我々にとっても同じことだろう。
憂鬱
最近なんとなく憂鬱なので5月病?と思っています。世の中が暗いですよね。あと、実生活でもコロナの不安がひしひしと迫っていて、いろんな対策がストレスです。そのうえ、オリンピックをめぐる世論の分裂など、テレビをつけると暗い話題ばかりで嫌になります。季節の変わり目でもありますしね。あと最近出費がかさんでいてこれまたストレスです。まずは引っ越しにだいぶお金がかかりましたし、それに伴い冷蔵庫など家電の買い替え、あとは慶弔費、そして今度は車検です。妻の出産もありますが、それについては妻に建て替えておいてもらうことにしました。薄給の身には厳しい面が多々ありますが、6月にはボーナスが出ます。それで何とか賄いたいですね。
最近は夜の残業にも慣れてきたかな。この調子で無理せずやっていきましょう。
乗代雄介『旅する練習』
本作品では、サッカー選手になることを夢見る小学六年生の女子の活き活きした情景が活写される。だが、この少女はいずれ事故にあってしまう。それだけではなく、会社に内定が決まったのに内定の辞退を迫られる大学生などが描かれる。ここで描かれているのは人生の普遍的な物語である夢の挫折・夢の喪失という物語だ。
夢に向かって突き進んでいるころ、少年や少女はとても光り輝いている。その光輝を丁寧に描いておきたい、きれいに保存しておきたいという創作の衝動はわかる。だがそれは夢を喪失したときの悲劇を一層増大させてしまうのだ。夢に燃えている少年少女は美しいから描きたい、一方でそれを描けば描くほど、その後の悲劇は際立ってしまう。そのようなジレンマを提示している作品のように思える。
途中挿入される旅の情景描写はとても美しく、筆者の地の筆力を十分伝えてくる。基本的な描写こそがすべての文学の基本にあることを改めて気づかせてくれる。