本作では、おそらく精神障害と思われる理由で菜食しかしなくなった主人公を軸に話が展開される。主人公はどんどん体調を悪化させ孤立していき離婚にまで至る。そのように、主人公の社会的な立場はどんどん悪くなっていくわけであるが、そのような主人公も映像作品の主役として芸術的には重要な役割を果たすことができる。芸術の領域が社会の領域から一定の距離を持ち自律していることがうかがわれる。
このように、人間としての価値、社会的な価値、そういうものが希釈されていく中で、その人の芸術的価値はむしろ濃くなっていく。芸術には、そういった論理や倫理とは別の次元の価値基準があり、それは論理や倫理には回収できない独自の次元を切り開いている。そういうことを改めて気づかされる作品だった。文学作品としての出来は超一流であり、数々の賞に輝いたのも納得する。
