albatros blog

広田修の書評とエッセイ

池下和彦『大切』(思潮社)

 老齢の方の詩集だが、若々しい感性を感じさせる良い作品だった。なんというか、屈折や韜晦などのない素直な生への感動をつづっていて、非常に純粋な気持ちで書かれた作品群なのだと思われる。詩人というものはたいていすごく傷を負っているものだが、池下は傷を超越してしまっているのかもしれない。

 この、受傷をいつまでも引きずっているのではなく、老齢とともに受傷が薄れ、むしろ受傷を超越するに至った境地で書かれる詩編というものもまた味わい深い。そこには若さが再び現れていて、詩作品も再び新鮮になる。歳を経て、人はどんどん若返っていくのかもしれない。