虚構が現実に闖入してくる悲劇を描いていると思った。物語の舞台では人々は夢遊となり、夢うつつの状態で暴行や略奪などを繰り返し、物語の舞台は混乱で収拾がつかなくなる。夢というものは虚構のものである。それはたいてい芸術作品として、虚構のものとして現実世界に入ってくるものだ。その虚構である夢が現実世界に現実としてダイレクトに入ってくる恐怖を描いている作品である。
閻連科がこの作品にどのような寓意や風刺を込めたのかは分からないが、私は現実と虚構という地平を異にするはずのものが交じり合ってしまう恐怖を描いたものだと読み取った。本作の解釈は本当にたくさんあると思う。そのくらい懐の深い優れた小説だと思う。閻連科の作品には毎回感嘆させられる。
