albatros blog

広田修の書評とエッセイ

残雪『突囲表演』(河出書房新社)

 社会がカオスであることを、ある男女の姦通をめぐるゴシップでもって示している。この男女というものが、そもそも年齢について奇怪極まる諸説紛々があったり、外見について奇怪極まる諸説紛々があったりして、そのあたりから「AがBである」と確定的に断言することがいかに困難であるか示される。そもそも社会の事象は諸説紛々を極めており、断言の難しいところにそのカオスの本質がある。

 このように、社会の混沌性を、これでもかというくらい様々な角度から詳しく描いていくわけであるが、社会における命題の成立の困難性をこんなに如実に示している小説は珍しい。また、下世話な話に終始しているあたりも、社会のきれいごとだけでは済まない混沌性を暗示している。とにかく社会はカオス。それを改めて実感した。