藤井晴美の本作は、徹底的に「実」を排して「虚」で充満している。世間的には重宝される「実」というものを極力排して、虚無や遊戯により作品を充満させること。宇宙が真空で満たされているように、本詩集は虚無で満たされている。虚無により何らかの深淵に到達しようともしない。徹底的に表層的に虚無であり続けること。そこに詩人の矜持のようなものを感じる。
本作は何も否定していない。否定はむしろ「実」に結び付く。否定性を持たずに単純に虚無であること。そもそもが世界というものは、何かを特段に否定せずとも虚無であること。詩人はその虚無に向かってすべてをかける。詩人のありったけの虚無で作り上げられたありったけの虚無である。とにかく素晴らしい。