albatros blog

広田修の書評とエッセイ

金井雄二『蒼い森の奥へ』(思潮社)

 金井雄二の本作は、人生というもの、家族というものがいずれも両義的であり、かつ人生と家族は密接不可分だということを簡潔な文体で示している。年老いて振り返ってみると、人生の各段階はそれぞれに矛盾している。人生は多義的・両義的であり、人は老いてもいるし若くもある。また、家族というものは心のよりどころである一方、暴力を内蔵してもいるものである。

 修辞を凝らすことであえて多義性や両義性を生み出すことは容易なことだ。だが、金井のような平易な文体で多義性や両義性を生み出すのは困難だと思う。金井はその技に見事に成功しており、詩作の技術の完成度の高さがうかがわれる。両義性や多義性は一つの美的性質だと私は思っている。