albatros blog

広田修の書評とエッセイ

ハン・ガン『引き出しに夕方をしまっておいた』(クオン)

 ノーベル賞受賞者のハン・ガンの詩集である。静寂が語りだすとまさにこんな言葉になるのではないかという言葉たちだ。沈黙を言葉にするとまさにこんな言葉になる。不在、存在しないものがふっと言葉になるとまさにこんな言葉になる。空間のひだに置き忘れられた言葉たちが、絶対的な静寂とともに現れる。

 詩としての完成度は非常に高く、このはかなげな叙景の技法は我々が詩を書く際にも参考になる。明澄な精神で、感受性が研ぎ澄まされながらも、最小限のことばしか費やさない。謙抑的であることで、無駄な言葉がそぎ落とされ、最も美しい世界の謎だけが残る。優れた詩集である。