albatros blog

広田修の書評とエッセイ

アニー・エルノー『ある女』(早川書房)

 アニー・エルノーによる自身の母親の生涯。一人の人間が生きる、その人生が存在するというだけで、とてつもない熱量・エネルギーが放出されるのだということに気付かされる。本作は、母親の生涯を丁寧に生々しく描くことで、その圧倒的な存在の大きさ、存在の熱さをこちらに伝えてくる。子どもの頃に受けた暴力とか、母親の美しい容姿とか、その仕事とか、その死に際とか、繊細かつ多角的に描くことで母親の圧倒的なエネルギーが伝わってくる。

 誰もがアニー・エルノーの母親と同様に、圧倒的なエネルギーを持って生きている。それは自分では気づかないかもしれないが、一人の人間の存在はこれほどまでにたくさんの他人に影響を与え、一人の人間の人生はこれほどまでに波乱に満ちている。人間の持つ熱量やエネルギーに気付かされる本である。