albatros blog

広田修の書評とエッセイ

ヴァージニア・ウルフ『波』(早川書房)

 モダニズムの手法の一つとして分析があると思う。本作は分析の手法を最大限に生かし、文学の異化作用を如実に発揮させている作品である。波や若者たちの暮らしがいろんな角度から分析され、通常とは異なった輝きを発している。波や若者たちは元の形を失って、実験台の上で解剖されてしまったかのような新たな相貌を見せている。分析とは科学的手法であり、近代的手法である。

 詩における異化作用を作り出す一つの精神が科学的精神なのである。科学的精神に基づく多角的な分析が文学にも応用されて、文学の異化作用を生み出している。これは日本の戦後詩の詩作においても多分に活用された手法であり、一定程度の成功を収めたと言ってよい。ウルフの本作は科学的精神による分析による異化作用において代表作と言ってよい完成度を誇っている。