albatros blog

広田修の書評とエッセイ

ハン・ガン『すべての、白いものたちの』(河出文庫)

 白という色は、決して派手ではないが美しい。その美しさは、微細な顫えを周りに伝えていくかのような、そして周りがその美しさに共に顫えていくような、そういう美しさだ。生まれてすぐになくなった主人公の姉もまた、白のようにはかなく美しい。そして、ここで紡がれていく詩的な物語たちも、根底における微細な顫えを読む者に伝染させるような不思議な力を備えている。

 物語を逸脱しながら、意味の豊かさを生み出し、奥深さや味わい深さを生み出している稀有な作品だ。作品としての価値は極めて高く、著者がノーベル賞を受賞したのもよくわかる。ハン・ガンについては、ぜひとも他の作品もすべて読んでしまいたい。そのように思わせる幸福な読書体験だった。