文学は人に自由をもたらすものなのだと改めて思った。作家は病身であり、入院して手術を受けたりの繰り返しである。そのようにして実生活が病によって不自由になっても、このように闊達に文学的想像力を働かせることができる。現実が不自由なことをつゆも見せないほどの自由自在な思索的エッセイの筆の運びだ。病のことはひとまず置いておいて、小説を書く喜びの中で自由自在にふるまっていることが凄く伝わってくる。
もちろん文学のもたらすものは作品の中での自由さにすぎず、作品の中でいくら自由にふるまっても現実の問題は一向に解決しない。それでも、作家にとって一番必要なのは作品の中での自由さなのであり、作品の中で自由であることの喜びなのだ。老いて病んでいても、喜びに満ちた自由で幸福な空間が残されているというのは作家冥利に尽きると言わざるを得ない。
