albatros blog

広田修の書評とエッセイ

上田岳弘『多頭獣の話』(講談社)

 ミステリー的な展開に様々な思想が織り込まれており、重厚なつくりとなっている。中でも特徴的なのが、YouTuberロボットによる「世界には生きる価値がない」という思想である。私はこの思想を前にして目からうろこが落ちるような気がした。なぜなら、私は世界は価値に満ちていると常々実感していたからだ。

 我々の世代は自責志向が強い世代である。上の世代からは結構責められて育ってきたと思う。何かあると自分が悪いと思いがちだ。だから、「自分には生きる価値がない」とは思っても、そこから「いや、世界にこそ生きる価値がないのだ」との飛躍ができない。だが、今の若い世代においては他責志向の強まりがあり、そうすると自分が悪いのではなくて世界が悪いという発想につながっていく。そしてそれが思想的に深められていく。世代のギャップを感じるとともに、今の若い世代の絶望の深さを感じさせられた。