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広田修の書評とエッセイ

鈴木涼美『グレイスレス』

 AV業界の生活史のひとつのように読んだ。生活史であるから、その業界の人間がどのような生活を送っているかについて記述しており、ポルノグラフィー的な扇情的な要素は一切ない。読む者に性的刺激を与える作品というのは、独自のレトリックで書かれているのだということに改めて気が付いた。確かに官能小説というのは独自の書法があり、そういった書法が本書には一切ない。AV女優の化粧師の生活史である。

 淡々とした筆致でAV業界の様子が描かれているが、そこに大きなドラマはなく、それであるからこそなじみのない生活のインパクトが積み重なっていき、読後には大きな感銘が訪れる。これは生活史の与える感銘と非常によく似ていると思った。もちろん小説としての完成度は高いが、生活史としても興味深く読める。