本作は、虚構でありながら現実の我々の人生に肉薄してくる、寄り添ってくる作品である。主人公はどこにでもいる平凡な人間であり、その平凡な人間の平凡な生活が記されている。それが、まるで我々自身のことを書いているかのように思わせてくるのである。我々とともに、我々に寄り添う小説を作者は書こうとしている。
虚構と現実の区別はあいまいだ。我々は現実世界においても様々に空想し虚構を生み出して生きているし、虚構の作品も現実と極めて似通っていたりして現実に近づいてくる。本作は、虚構の現実に肉薄してくる側面をうまく活用し、親しい隣人のようなどこにでもいる人間を描くことで、我々にとても親しく感じられる。そのような虚構の側面を利用しており好感が持てる。
